世の中に採用コンサルタントと名乗る人は数多くいらっしゃいます。
採用ノウハウを提供するコンサルタント会社、求人媒体を運営する会社の営業マンなど。
しかし、採用コンサルタントという資格があるということはあまり知られていないのはないでしょうか。
以前に新卒採用の現場で仕事をしていた時に、たまたまお世話になっていた取引先の人事担当者の方からその情報を教えていただきました。
当時の記事です。
ディスコ、「採用コンサルタント」資格制度 創設
日本の人事部 掲載日:2010/08/03
就職・進学情報会社のディスコ(東京都文京区、小坂文人・代表取締役社長)は、
社団法人総合経営管理協会(東京都千代田区、加賀博・会長)と共同で、
人事・採用業務のあり方を学ぶ「採用コンサルタント」資格制度を創設しました。
https://jinjibu.jp/news/detl/4073/
ディスコというのは就職サイトのキャリタスを運営している会社です。
キャリタスはかつての日経ナビです。
私がこの資格を取得したのは7年くらい前になりますが、今もあまり認知度が上がっておらず残念です。
今回は名前はカッコいいけど、認知度の低い採用コンサルタント資格について紹介したいと思います。
どんな資格?
採用コンサルタントは人事業務の中でも特に「人材採用」に焦点をあてた資格となっています。
人事や採用に関わるさまざまな法律や採用業務に関する基礎知識、採用計画を実践的に理解することで
採用活動全般を実施していくために必要な知識とスキルを身につけることを目的にしています。
テキスト3冊による通信教育の受講、1日のスクーリングを経てプログラムを修了した後、認定試験に合格すると、一般社団法人総合経営管理協会認定の資格として「採用コンサルタント」の資格認定証を授与されます。
資格学習を通じて採用活動に関すること全般についての幅広い知識を身に付けることができる資格になっています。
後に記載しますが、テキストはとても体系的に内容が構成されています。
会社ではじめて採用担当となった際など、ウェブサイトで効率よく情報を集めることはなかなか大変ですが、このテキストには網羅的かつ順序立てて必要な情報が掲載されているので時間効率よく採用活動に必要な情報を得ることができると思います。
ちなみにスクーリングについては、私が受講した際は1日の講習で講師1名、10名弱の受講者という構成でした。
社労士の方が受講生の中には多かった印象です。
中小企業の採用活動の相談を受けている関係で受講している、といったお話をお聞きしました。
テキストの内容を振り返りつつ、受講者間で意見共有する機会もあったので、楽しい時間でした。
資格取得方法
採用コンサルタント資格は、一般社団法人総合経営管理協会という団体が実施をしております。
その団体のウェブサイトにアクセスし、資格講座を申込みします。
「採用コンサルタント」という言葉はこの資格に関わらず一般に使用されることが多いので、ご注意ください。
・受講期間
講座は3カ月間の通信講座と1日のスクーリングを受講後の認定試験の計4カ月のカリキュラムで構成されています。
合格率などの情報が開示されていませんが、基本的に講座を受講するとほぼ100%資格認定されるのでは、と思うほど難易度は高くない印象を個人的にはもっています。
もちろん、通信教育時の課題はきっちりこなす必要がありますが、テキストをしっかりと理解すれば問題なく対応できるレベルかと思います。
・通信講座のテキスト
「知識編」、「計画編」、「実践編」の3冊のテキストが用意されています。
通信教育は各テキストで課題が出され、20問中、7割以上の正答率で合格、7割未満で再提出となります。
テキストを読めば解ける内容かと思います。
また、テキストは1カ月ごとに1冊届きますので、無理なく勉強ができるスケジュールではないでしょうか。
・スクーリング
丸1日で基礎編と実技編で構成されています。
基礎編は人的資源管理に関する基礎知識、採用計画の立案、各種イベントの計画・運営について学び、
実技編では採用計画の実技、面接実技を学び、最後にまとめと質疑応答がおこわれます。
私が受講した際は10人程度の少人数でしたがグループでの意見共有などは面白かったですね。
いろんなバックボーンを持った方と行うことができてよかったです。
・認定試験
スクーリング終了時に問題が配布され、解答を郵送します。
不合格の場合は1回のみ再受験可能なので安心ですね。
・受講料
95,000円(税込み)
講座内容
スクーリングは1日あるにしても、メインは3カ月の通信講座でしょう。
では、どういった内容を学習するのか、そのテキストの内容をざっとあげてみました。
①知識編
・人的資源の関する基礎知識
→労働市場に関する一般的知識、労働市場に関する政策
・労働市場の動向
→新卒・中途採用市場の動向、外国人採用にも触れる
・人的資源の管理
→雇用管理、人事評価管理、労働条件管理など
・採用管理
→採用計画、採用の手順、採用活動の体制づくり
②計画編
・採用計画
→採用要員計画、採用予算計画
・採用基準の構築
→求める人材像の確立、採用基準の設定、採用コンセプトの明確化
・採用手法
→選考方法、評定項目と評定基準、選考スケジュール
③実践編
・母集団の形成
→採用広報計画、メディア戦略、イベント戦略、応募者管理
・説明会の開催
→合同企業説明会、会社説明会、OBOG訪問
・選考・内定者フォロー
→書類選考、筆記試験、面接、合否決定、内定フォロー
採用活動は募集広告を出し、説明会を行い、面接を実施するなど、一見すると対外的な業務が多い印象がありますが、実際には採用基準の策定に始まり、スケジュール決め、面接官の選定など、社内向けの仕事も数多く実施する必要があります。
私も採用業務を行っている一人ですが、この採用基準をエビデンスをもとに確立したり、その採用基準を社内に浸透させ、面接を実施してもらうなど、なかなか大変です。
人が人を評価するという行為の難しさを感じています。
テキストは、これらの活動の一般的な事項が整理されていますので、そのフローに沿い、社内の状況を
加味していくことで一定の採用活動を行うことができるようになると思います。
個人的には、採用活動の最も根幹にあるのが、「どんな人材が欲しいのか」という求める人物像の定義化の部分かと思います。
多くの要素が挙げられるため、完全に統一した基準を作成するのは困難かもしれませんが、少なくとも、「こんな人は採用してはいけない」という基準は作成できると思いますので、ベストな人材でなくともベターな人材の採用活動にはすぐにとりかかれるのではないでしょうか。
一般社団法人総合経営管理協会とは?
資格のコンセプトも明確で、学習内容も実用的な採用コンサルタント資格。
では、この資格を取得することはどれだけの価値があるのか?
まずは資格の認定団体の観点からみておきましょう。
ウェブサイトによると、協会の理念は以下のように書いてあります。
経営管理及び人材育成に関して、調査研究を行うとともに、各種講座・講習会の開催及び資格認定を行なうことによって、企業及びその他の団体の健全経営、安全管理並びに人材育成を促進し、我が国経済社会の発展に寄与することを目的としております。
一般社団法人総合経営管理協会 ウェブサイト
ただ採用コンサルタント資格を認定している一般社団法人総合経営管理協会という団体について、多分、誰も聞いたことのない団体ですよね。
ウェブサイトによると、概要は以下のとおりです。
設立:昭和48年4月18日
代表理事:田部井 大介
本店:東京都中央区日本橋3-2-14
事務局:東京都中央区日本橋堀留町2-3-14THビル7F 神戸学園 内事業:
(1)経営及びマネジメントに関する講座実施及びその資格認定
(2)経営及びマネジメントに関する研究及び調査
(3)経営及びマネジメントに関する各種講習会の開催
(4)企業内教育、訓練の受託実施
(5)人材育成のための専門職能講座の開催及び技能、資格認定
(6)労働安全衛生法に定める各種技能講習会の開催
(7)その他当法人の目的を達成するために必要な事業
事業内容は様々に記載されていますが、採用コンサルタント資格の認定を主とした団体なのかな、
と思われます。
逆に、それ以外の情報はなかなかインターネットでも検索できないんですね。
資格講座を受講した身としては、スクーリングの時の対応やその他のやり取りを通じても、怪しい団体とは思いませんが、もう少し認知度が上がってほしいところですね。
採用コンサルタント資格は役立つか
個人的な結論ですが、資格の力という点では、役に立つことは少ないと考えています。
理由はシンプルで、その資格が認知度が低いから。
認知度が低いと、仮に履歴書の資格欄に書いても、それにより能力の証明することが難しいです。
しかも、採用のプロである人事担当者に知られていないと、なんかよくわかならい資格だなぁ、という
ことで終了してしまいます。
こうした理由から現時点では、この資格の力が大きいとはいえないのでは、と思います。
一方で、その講座内容はとても整理されておりますので、実践でも役に立つ内容だと思います。
採用活動の基本事項は整理されていますので、後は社内の状況によってカスタマイズしていくことで採用計画から実践までできてしまうのではないでしょうか。
採用活動を学習するのための書籍やウェブサイトもありますが、必要な情報が体系化されているものばかりではありません。
様々なものに手を出してしまうより、この講座を受講することで効率よく学習できるのでは、と思います。
つまりは、資格取得に向けた学習をすることが、採用業務を行う人にたって役立つのではと思います。後はそのために約10万円の投資をすることについてどう判断するか、ですね。
今回は、採用コンサルタント資格について書いてみました。
認知度の低さゆえ、資格そのものの効力がない、みたいなことを書いてしまいましたが、更新不要の資格として認定されるものですし、資格保有者としては、ぜひ認知度が上がり、対外的な能力証明して活用できるようになればと願っています。