百貨店の物産展は、全国の名物が集まる華やかな空間。
その中で「支那そばや」の暖簾を発見。

だいぶ前ではあるが池袋で食べた以来だ。
今は戸塚にお店があるはず。
私が子供の頃、ラーメンの料理としての存在感は今ほど高くなかったはず。
安くておいしい、といった印象。
今も、手軽な存在ではあるが、各店のこだわりがつまった料理としての存在感はかなり多い。
世界に誇る日本食であるし、ミシュランで星をとるほどでもある。
そして、そのラーメンの価値の底上げに大きく貢献した一人に佐野実氏があるのではないどうか。
人気テレビ番組に登場し、ラーメンの鬼といわれた。
それだけ“本物を出す”というラーメンへのこだわりが強かったためだろう。
あの飯田商店も佐野氏がなければ誕生していなかった。
さて、百貨店の特設ブースに入ってみる。
佐野実氏が生前に築いた、あのストイックな姿勢がふっと蘇る。
食べてみると、物産展の臨時店舗とは思えないほど、
スープの透明感と旨みの層がしっかりしている。
鶏の旨みが雑味なく立ち上がる
醤油の輪郭が丸く、舌に優しい
表面の油が香りを支え、余韻を伸ばす
麺も、ただの細麺ではなく、
噛むほどに小麦の香りがほどける“料理としての麺”になっている。
「素材に嘘をつかない」
「ラーメンは料理であるべきだ」
佐野実氏の哲学が、臨時出店という環境でもしっかり守られているのが伝わる。
物産展の出店は、設備も環境も本店とは違う。
それでもこの一杯が成立しているのは、
素材選びと仕込みの基準がブレていないからであろう。
スープの出汁の取り方、醤油の選び方、油の量と香りのバランス、麺の茹で時間の精度。
どれも「支那そばやの味」を再現するための最低ラインが高い。
その基準が、今もスタッフに受け継がれているのだと感じた。

